2003/10/2・5の日記より



数学の授業中に考えていた『新説・浦島太郎、桃太郎』を書きたいと思います。

あと、ここおかしいぞ、って言う感じの突っ込みはなしで。


それではどうぞ、

『新説・浦島太郎、桃太郎』


昔々のある日、海岸に立ち寄った浦島太郎という名の若者は、
子供達にいたずらされている亀を見つけた。

彼は子供達を追い払い、亀を助けてやった。
そう、彼は良い心の持ち主で、困っているものを見ると居てもたってもいられないのだ。


その時、彼は立ち去っていく子供達の目が振り向きざまに妖しく光ったことには気付かなかった。


浦島が亀を海に返そうとすると、亀は突然人間の言葉で彼に話しかけてきた。

「わたしに乗って下さい。いいところに連れて行ってさしあげますので。」

浦島は亀が話しかけてきたことに驚き、
亀のそばからすこし後ずさりしてしまった。
しかし、彼はとても好奇心旺盛で、言葉を話す亀に興味を持ったのだ。

「どこに連れて行ってくれるのですか?」





浦島太郎を乗せた亀は海の底にある『竜宮城』にたどり着いた。

そこには絶世の美女『乙姫』がいて、浦島を手厚く歓迎したのだ。
彼は竜宮城で鯛やヒラメの舞い踊りを見て、楽んだ。

時を忘れた浦島は、いつの間にか十と数日が過ぎた。

そして、その楽しい時間の中で、
乙姫は浦島に。
浦島は乙姫に恋をした。

彼はいつまでもここで時を過ごしたい。
そう思った。
しかし、ただ一人地上に残してきた母親が心配で仕方がなかった。
母親は彼の唯一の肉親だからなおさらだ。
身を裂かれるような思いになりながら、彼は翌日に帰ることを決めた。

最後の日、二人は別れを惜しみながら体を重ねた。


次の日、
別れの時に乙姫は浦島に玉手箱を手渡した。
「決して開けてはいけませんよ。」
こう言いながら。
興味津々になりながらも、浦島は乙姫のことだからなにかのお守りだろうと思った。


再び亀に乗り、浦島は地上へと帰って行く。
その目には涙が溢れ、それらも海へと還って行く。


その姿が見えなくなると、乙姫の目はあの時の子供達と同じように
妖しく光った。

浦島はもちろん、何も知らない。





無事、地上に戻った浦島太郎。
辺りを見回すと微妙に様子が違っていることに気付いたが、
そんなことはどうでもよかった。
彼はすぐさま家へと駆け出した。
母の待つ、我が家へと。

彼は家に着くまでの道中、母に何を話そうかと考えていた。
海の底の楽園、竜宮城のこと。
言葉を話す亀や魚達のこと。
そしてもう会えない大切な人、乙姫のこと。

驚く母の顔を想像して。胸を弾ませながら足を早めた。




やっと着いた。
「ただいま!母さん!」

・・・・・・しかし、家があるはずのそこには、なにもなかった。
母さんのいるはずの家はそこになかった。
あるのはただ、異常に成長した雑草のみだった。






彼は困惑した。


何が起こったのかわからない。


あたりを駆け巡り、母の姿を探す。


結果、
母はどこにも居ない。



彼は泣き崩れた。

何が起こったのか、わからない。

しかし自分の心を圧迫する、たった一人の肉親の母が居ない。という事実。

彼は泣き続けた。
声をあげ。時にやりきれない思いを地面にぶつけながら。



いつの間にか、彼はうっそうとした雑草の茂みの中で眠っていた。
ほほに涙のあとを残したまま、孤独感で呆けていた彼は、
ふと自分のそばに転がっている玉手箱に気が付いた。
そして何も考えずに、何も考えれずにその玉手箱を開けてしまった。

もうもうと箱の中からわき出るケムリ。

ケムリがすべて消え去ったあと、
そこには箱を持った一人の老人だけがいた。

老人はわが身に降りかかった出来事のすべてを理解できないまま
その老いた体と狂乱してしまいそうな精神状態のせいで、
その場から動くことができなかった。





老人は高く生えた草に囲まれながら、静かに息を引き取った。











浦島が帰った後、乙姫と、その周りにいた鯛やヒラメたちは一瞬にして姿を変容させた。

その皮膚の色は実に鮮やかで、赤や青、そして緑や黄色のものもいた。
頭には角が1〜2本ほど生えていて、犬歯は大きく、そして鋭くとがっていた。
それは『オニ』に良く似ていた。

そして、住人が姿を変えるにしたがって、竜宮城も形を変えた。

竜宮城は変化する。
古典的な内装が、何かの機械がむき出しで、
乙姫たちが高度な文明を持っていることを連想させるものへと変わった。

「さあ、早送りしてしまった分だけ元の時間へと戻りましょう。」
「そうですね、じゃないと私たちまで故郷に置いて来た者達に会えなくなりますからね。」
乙姫と元ヒラメ達はこう言って元竜宮城に入っていった。

そして、角の生えた彼女達は、浦島太郎が亀を助けた時間まで戻って行った。
十数日前に浦島太郎が海岸にいたはずの、しかしもう死んでしまっているので、いない時間へと。


乙姫の体には二つの新たな命が宿っていた。
そう、浦島の子供である。


オニたちはこれが欲しかった。
この人間とオニとの子供が欲しかったのだ。
濃くなりすぎたオニの血。
他にも理由はあるが、オニは成長が早いためにどんどん増えるオニの子。
一刻も早くの人間の血が欲しかったのだ。

しかし、オニの存在が人間に知れると何事もやりにくい。
そのために母親しかよく知る人のいない、
元気な若者の浦島太郎を相手に選び、
オニの中でもっとも良い能力を持つ乙姫が彼の相手に決まった。

彼の目を乙姫のみに向けるため、
他のオニたちはあえて人間以外の生物に姿を変えた。
これで寂しさもあいまって、
浦島は自分以外のたった一人の人間の乙姫に惹かれるようになる。

浦島が地上に戻って、この話を伝えるといけないので、
彼らは竜宮城内の時間を早めることにした。
そう、彼を誰も知る人のいない時代へ出して、迷子にしてしまおうというわけだ。

しかしオニと言っても優しさはある。
そもそもこの計画だって種族を守るための策なのだ。
悪心からではない。

なので、浦島が孤独で、長く苦しみを味わうのなら
いっそのこと彼の寿命を短くしてあげようと思い、玉手箱を渡したのである。
開けてはいけない、と言ったのは彼の好奇心を誘うためだ。







そう、
すべては周到な計画にそって動いていたのだ。




___________




乙姫の体に宿った二つの命。
一人は人間の血がオニの血よりも濃く流れていて、
もう一人にはオニの血が濃く流れている。

オニの血が濃い子供はもう一人の子供よりも早く成長し、
まもなくすると先に生まれ出た。

彼は鬼太郎と名づけられた。

それからもどんどん成長して行き、
生殖行為が可能になると、彼は人間界へと出されたのだ。
より多くの人間とオニとの混血種を作るためである。


彼には拠点となるための一つの無人島が与えられた。
そして、鬼太郎は人間の姿になって、
この島から近隣の村に出て行った。

彼はその村の健康な女性のほとんどを自分の島へと連れ帰った。
乙姫から受け継いだ魅力と知略と変身能力を使って。




鬼太郎がそんなことをしている時に、
人間の血が濃い方の子供が生まれた。

彼の姿は人間そのもので、
このまま鬼の世界で育つと、まさに醜いアヒルの子。
自分に自信のない子に育つだろう。
そう思った乙姫は彼もまた、人間界に出すことにした。
しかし鬼太郎と違うのは、彼が赤ん坊の時に人間界に送られることだ。


乙姫は考えた。
この飢餓の世に、捨て子を見つけたとして、
家に持ち帰り、そして育てるなんていう人間はいないだろう。と

ならば、子供のできなかった夫婦、
しかも、なるべく世間との接触のない山の奥、
そして子供のみに労力を使えるという点で、老夫婦がよい。

その上、とにかく家に連れて行かないと話にならないので、
老夫婦の興味を引くものにこの子を隠すのが良いだろう。
興味を引くものは、飢餓の世では食べ物が効果覿面だ。




ある山奥に住む老夫婦、
そこにある日赤ん坊がやってきた。
その子は川に流されていた大きな桃の中に入っていたので、
桃太郎、と名づけられた。

桃太郎はその体に流れるオニの血の力によって、
鬼太郎と比べると遅いものの、
人間よりもとても早い速度で成長していきました。

そして彼が年のうちに唯一町に下りる機会である、
年末の準備の買出しに行ったときに
鬼が島で、村の女をさらって悪さをしている者がいるという噂を聞きました。

彼は家に帰ると、老夫婦にこう言いました。
「これから鬼が島に行って悪人を退治してくる。」
父親の浦島太郎ゆずりの好奇心が彼を島へと連れて行きました。


桃太郎が鬼太郎を退治しに行くと聞いた乙姫は焦った。
気付いた時には桃太郎は人間味を帯びすぎていたのだ。
このままお前はオニの子だと告げたとしても、彼は混乱するのみだろう。

とりあえず、乙姫は動物に変化した仲間を桃太郎の監視役として付かせることにした。
サル、イヌ、キジに変身したオニは、
鬼が島に桃太郎が着いた時に争わないようにさせようとしていた。




桃太郎は、ついに鬼が島へとやってきた。

そこでは鬼太郎が本能をむき出しにしているために、
オニの姿で人間の女性と子作りに励んでいたのである。
それを見た桃太郎は連れ去られた女性を取り戻すために鬼太郎と闘った。
サル、イヌ、キジは猛る桃太郎を止めることはできなかった。


自分達が実の兄弟だと知らない二人は闘い狂った。
三日間夜も寝ずに闘った。

闘い。闘った。

闘いを通して、二人の男は互いのことを良く知った。


決着のつかない戦いの末、
やがて生まれる友情


そして、闘いによって傷ついた体を互いに慰めあうことによって、
やがて生まれた愛情


二人は恋に落ちたのだ。

それは本能ゆえの運命なのだろう。
オニにとって次世代を作ること、それが最優先なのだ。


そして桃太郎は、鬼太郎の子供を身ごもった。

そう、オニは男性器を持つもの同士ならば子供を作ることができるのだ。
それが、オニ達の子供が多くなったもう一つの原因でもある。



鬼太郎と桃太郎の子供は、二人の人間の部分のみを受け継いだ純粋な人間の女の子だった。


彼らはその子供を桃太郎が人間界に出されたのと同じ理由で、
人間界へと送った。

今度は桃ではなく、光り輝く竹の中だった。


桃太郎の時のように、人間味を帯びすぎないように、
細心の注意を払いながら、最後はきちんと回収することができましたとさ。


めでたしめでたし




___


途中で時代が前後しましたが、気にしたら負けですので
そこらへんご注意を


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